iPhoneをアメリカで作るとどうなるのか?

11月に行われた大統領選挙ではドナルド・トランプが勝利し、Appleのようなグローバル企業は、1月の大統領就任後に何を言ってくるのか、息をひそめて様子を窺っている。

MITテクノロジーレビューによると、AppleのiPhoneをアメリカで作るのは、それほど夢物語ではない?らしい。

シナリオ1 – コンポネント(部品の集合体で、製品の一部)は、海外工場から調達するが、その組み立て行程をアメリカ本土で行う

2016年現在、iPhoneは7つの組み立て工場で組み立てられている。そのうち、6つが中国で、1つがブラジルである。もし、これらの工場をアメリカに移して、コンポネントを世界中から調達する場合はその値段はどうなるだろうか?IHSによると、iPhone6s Plusは749ドルで売られており、そのコストは230ドルである。また、新モデルのiPhone SEは399ドルで販売され、コストは156ドルである。

これらのiPhoneの組み立てに必要な費用は、1台あたり、IHSによると4ドル、ジェイスン・デドリック(シラキュース大学教授)によると10ドルとなっている。デドリックによると、アメリカで組み立てを行う場合、1台当たりの費用は30ドルから40ドルの増加となるが、アメリカ人のほうが労働費用が高いことよりは、輸送手続きを含めた物流コストが高くなる比重が大きいという。

結果としては、iPhone6s Plusは5%値上がり(749ドルの5%は37.45ドル)すると推定している。

Appleは、サプライヤーは160万人を雇用している、と言っているが、最終組み立て工程は、その一部でしかない。そのため、最終的な組み立て工程だけをアメリカに移しても、それほど大きな変革にはならないだろう。

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シナリオ2 – コンポネント・レベルからアメリカで製造を行い、アメリカで組み立てる

Apple社製品(iPhone, iPad, Macなど)のサプライヤーは、世界に766社あり、そのうち346社は中国、126社は日本、アメリカは69社、台湾は41社である。

コンポネントの中で最も高額なものは、タッチスクリーンの部分であり、コーニング社は、ゴリラグラスをアメリカ・ケンタッキー州、韓国、日本、台湾の工場で生産している。タッチスクリーン部分のコストは、iPhone6s Plusで約20ドル(IHS試算)となっている。

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それ以外の部分で高額なパーツは、プロセッサーであるが、サムスン、TSMC(台湾)が生産しており、約15ドルである。また、SE用のセルラーモデムチップはクアルコム社製で約15ドルである。

NANDとDRAMのメモリにはさらに15ドル、電源管理チップには6.50ドル、無線アンプとトランシーバにはさらに15ドルが追加される。

これらのチップの多くは契約に基づいて製造されているため、製造場所を正確に知ることは困難である。

例えば、大手の委託製造業者であるGlobal Foundries社は、ドイツ、シンガポール、ニューヨーク、バーモントの工場でクアルコム向けの企業用マイクロチップを製造している。

半導体製造を専門とするMITの電気技術者であるDuane Boning氏は、個々のチップを切り出すウェーハを製造するには、どの国であっても 「本質的にコストの差がほとんどない」と言う。

「労働コストは、数十億ドルの工場に入る機器や設備に比べると、ほんのわずかな費用です」とBoning氏は言っている。

エネルギー省のAmes Laboratoryに本拠を置くクリティカルマテリアル研究所のダイレクター、アレックス・キングは、「半導体工場は建設後数年で時代遅れになる」と指摘している。

「したがって、新世代の半導体では、常に、米国を含む世界のどこでも半導体工場を設置する機会がある」とも述べている。半導体工場で使用される機械装置の大部分は、未だにアメリカ製が多い。

iPhoneに搭載されているさまざまなチップやその他のコンポーネントは、低価格でできるのでしょうか? デッドリックと彼の同僚は、米国でiPhoneの構成要素を生産すると、デバイスのコストにさらに30ドルまたは40ドルを追加すると推定しています。

当初、少なくとも、「米国 工場はこれらの品物のほとんどで競争力がなく、少量で稼働し、アジアとの差をさらに高めてしまうだろう」とデッドリックは指摘する。

しかし、このシナリオでは、部品に入ってくる原材料が世界市場で購入されたと仮定して、1台のiPhponeはせいぜい100ドルほど高価になるだろう、と彼は言う。

 

シナリオ3 – コンポネントを構成する部品の素材レベルから、アメリカで調達し、アメリカで製造する

ハイテク経済における貿易の重要性を完全に理解するには、候補者が示唆している以上のシナリオを想像してみよう。

もしAppleが「アメリカの原子」からiPhoneを作り出そうとしたら、アメリカは全く必要な素材を調達するために外国政府にアクセスする必要がなくなるのだろうか?

Ames LabのKingによると、iPhoneには約75の要素があり、それは周期表の3分の2である。

iPhoneの外面だけでも、米国では生産されていない素材に大きく依存している。アルミニウムはボーキサイト由来で、米国には主要なボーキサイト鉱山はない。(リサイクルするとしても、国内産でなければすぐに枯渇する)

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レアアース(希少ではないが鉱山は難しい)として知られる要素は、主に中国から来る必要があり、それは世界の供給の85%を生産している。

ネオジムは、iPhoneの磁石のために必要であり、モータに使用され、iPhoneを振動させるものと、マイクとスピーカーを振動させるものがある。

別のレアアースであるランタンはカメラのレンズに入る。 レアアースではないが、非常に希少な金属であるハフニウムは、iPhoneのトランジスタにとって不可欠である。

レアアース金属に関する新刊「The Elements of Power」の著者、デイヴィッド・アブラハム(David Abraham)は次のように述べている。「ハイテク製品は、鉱山での採掘から製品組立までを一国で完結することはできません。」

iPhoneはアメリカの創意工夫の象徴であるが、それはまた避けられない世界経済の現実に対する証でもある。

参照:

https://www.technologyreview.com/s/601491/the-all-american-iphone/